インナーマッスル鍼法

0.目次

 

1.インナーマッスルとは?
2.慢性骨格筋疲労症候群とは?
3.一般的な鍼治療
4.北京堂鍼灸との出会い
5.北京堂式の痛みをついに体験
6.インナーマッスル鍼法の特徴
7.適応症かどうかの判断
8.治療回数の目安
9.治療を受ける前に読んで下さい

 

1.インナーマッスルとは?

 

「インナーマッスル」とはどんな筋肉なのでしょうか?インナーという言葉は英語の「Inner」。「内部の」「奥の」という意味があります。そのまま訳せば、「奥にある筋肉」ということです。

 

人間の筋肉は、ミルフィーユのように何層にも重なって体を覆っています。この中で比較的深い部分にある筋肉がインナーマッスルと呼ばれています。ですから、インナーマッスルを「深層筋」と呼ぶこともあります。従って、インナーマッスルというのは、どこか一つの筋肉を指している言葉ではなく、体の奥のほうにある筋肉の総称と言ってよいでしょう。

 

そしてこのインナーマッスルは、主に姿勢を細かく調節したり、姿勢を維持したりするという働きをしています。また、体が動く時になめらかな動きを可能にするために働いています。イメージとしては、大きな表面の筋肉だけで体を動かすとロボットのような動きになり、それを人間らしいなめらかな動きにするにはインナーマッスルの働きが必要です。

 

このインナーマッスルは、あまり体を動かさないでいると凝り固まって筋肉が縮み、柔軟性に乏しくなり、体を動かしにくくなったりします。例えば、ずっと背中を丸めて座りっぱなしでパソコン作業をしているとします。肩甲骨に関係するインナーマッスルが凝り固まりるす。すると、腕を頭の方に上げにくくなり、首や肩に違和感やコリを生じるようになります。

 

また、腰や股関節に関係するインナーマッスルが凝り固まると、イスから立ち上がる時に、腰や股関節がうまく伸びないために、思わず膝に手をついて、「よっこらしょ」と言って立ち上がるのです。

 

体を動かしにくいという程度であれば、大抵の人は放っておくでしょう。人間は回復力があるので、ゆっくり休んで栄養もしっかり取れば、筋肉も元の状態に戻ります。しかし、忙しかったり、ストレスがたまっていたり、体をケアすることが出来ない状況が続くと、ある時急に痛みとして表れてくるのです。日々の体の負担が積み重なったことで起きるので、特に思い当たる原因がみつからない、という方が多いです。

 

2.慢性骨格筋疲労症候群とは?

 

特に体の表面ではなく、奥の方が痛いとか固くなっているという感覚がある場合は、ほぼ間違えなくインナーマッスルが凝り固まっています。長年、慢性痛で悩んでおり、運動をしたり、ストレッチをしたりしている、または、整形外科ら整骨院や接骨院で治療を受けている、にも関わらず、なかなか症状が軽くならない場合、ほとんどの方はインナーマッスルが固くなっていますが、インナーマッスルを緩めるのはなかなか難しいのです。

 

筋肉が硬くなれば、その筋肉の中を通過している神経が圧迫され、痛みの電気信号が送られます。その痛みは防衛反応によりさらに筋肉を硬くします。同時に、筋肉の中を通過している血管も圧迫されて、血液循環が悪くなります。そうすると筋肉細胞は酸素不足になり、血液中の血漿から発痛物質をだし、痛みを感じます。痛みを感じると、脳はそれを受けて交感神経を緊張させ、ますます血管が収縮します。

 

血行だけでなく、リンパ液の流れにも注目しなければなりません。リンパの流れが悪くなれば、むくみが生じます。痛みがある筋肉は見た目で腫れぼったいのが分かります。リンパ液の流れが内蔵の付近で起これば、その内臓にも病変が起きます。

 

また、筋肉疲労が起きると自律神経が誤作動を起こします。自律神経は交感神経と副交感神経で構成されていますが、背骨の横を走行しています。背骨にはさまざまな筋肉(インナーマッスル)が取り巻いていますが、それらの筋肉が慢性疲労を起こすと、自律神経にも影響を及ぼすと言われています。自律神経は、人体のあらゆる内臓に行き届いていますから、やはり内臓に病変が起こるのです。

 

ですから、病院で検査しても異常でない内臓の異常は、背中のインナーマッスルの過緊張による自律神経失調症が原因かもしれません。実際、背中のインナーマッスルを緩めると、症状が緩和されるケースがあるのです。筋肉が硬くなると様々な病気を引き起こすことを「慢性骨格筋疲労症候群」と私は呼んでいます。

 

医学部では、筋肉の生理学や病態についてあまり習わないようです。現代医学から「筋肉」はすっぽりと抜け落ちてしまっています。「痛みのメカニズム」は基礎医学でちょっと習うだけで、現場に出るころには忘れてしまっているのが現状のようです。

 

そんなお医者さんが、習ったことがない筋肉の病態を診ているのです。そして、レントゲンやMRIで見える「骨の異常」が痛みの原因だと教えられているので、疑うこともせず、そう思い込んでいるのでしょう。これでは治療できるはずもありませんし、これが慢性痛などの痛みが、整形外科にいっても少しも治らない背景です。しかし、個々の整形外科医の資質ではありませんし、責めることはできません。

 

慢性骨格筋疲労症候群により引き起こされる病名でよく見られるものを一覧にまとめてみました。

  • 頭・顔:緊張性頭痛、偏頭痛、顎関節症、耳鳴り、歯痛、目の異常
  • 首・肩:肩こり、胸郭出口症候群、むち打ち症、肩痛(五十肩、野球、水泳)
  • 腕・手:腱鞘炎(親指、手首)、肘痛(テニス、ゴルフ、野球)、
  • 腰背部:筋膜性腰痛、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腰椎分離症、肋間神経痛
  • 脚・足:股関節痛、坐骨神経痛、肉離れ、膝痛(変形性、ジャンパー膝、鵞足炎、オスグッド病)、こむら返り、足底筋膜炎、捻挫の後遺症、アキレス腱炎、シンスプリント
  • 全身症状:自律神経失調症、更年期障害、軽度うつ症状

 

内科や婦人科疾患も慢性骨格筋疲労症候群として治療してみるとうまくいくことも多々あります。

 

3.一般的な鍼治療

 

一般的に鍼灸院では、「鍼は痛くない」と紹介します。これは鍼治療を知らない患者さんに恐怖心を与えないということが一つの理由にあると思います。「鍼は痛いです」と言ってしまったらなかなか来てくれませんから。多くの治療院では、細い鍼を皮膚(ツボ)に数ミリ入れることで、心地よい刺激を与え、本来持っている人間の治癒力を引き出すという治療方法を採用しています。

 

しかし、「痛くない」鍼治療を受けたことのある人の中には、慢性痛などのしつこい痛みに関しては、本当に効いたのかどうかよく分からない(多少は良くなった気がするけれども・・・)もしくは効果が長続きしないという実感をもつ方もいるのではないでしょうか。

 

私もかつて痛くない鍼治療を行っていましたが、ひどい肩こりや腰痛が自分が思うようにはなかなか治らず悩んでおりました。症状は軽くなるので患者さんには喜んでいただいていましたが、私としてはあまり納得していなかったのです。

 

※2013年に「整動鍼」という刺激が軽く、本数が少なく、治療時間も短いという特徴を持つインナーマッスル鍼法とは真逆の治療方法に出会いました。従来の軽い刺激の鍼灸治療とは一線を画した新しい鍼治療です。ツボを刺激することで体の連動を取り戻すことにより、筋肉の過緊張が緩和します。インナーマッスルにも効果があります。痛みが出る動作や痛みの場所がはっきりしている場合、鍼が初めての場合、体力が落ちている場合、治療の当日や翌日に安静にできない場合(試合がある、旅行にいくなど)は、私は「整動鍼」を選択することが多くなりました。

 

4.北京堂鍼灸との出会い

 

インナーマッスル鍼法は私が開発したものではなく、北京堂鍼灸の淺野周先生が現代の中国鍼灸と日本の鍼灸をミックスさせて発展させた治療方法です。特に「大腰筋刺鍼」という治療は、同業者の間でも有名で、腰痛や坐骨神経痛の治療成績は抜群です。淺野先生の地元では、腰の曲がった高齢者が少ないのだとか。これは腰痛をしっかり治しているからです。

 

淺野先生の治療方法は、WEBサイトでも公開されておりますので、誰でもまねる事が出来ます。しかし、新米鍼灸師だった私には(私だけでなく多くの鍼灸師にとっても)、深く鍼を入れるのは怖くてできませんでした。淺野先生の治療方法に長い間興味を持っていたのですが、やはり実際に治療を受けたり、見てみたいと思い、連絡をさせていただきました。

 

しかし、私は腰痛が全くなかったので、淺野先生は無駄な治療はしたくないということで治療はしてもらえませんでしたが、外部研修生として通って良いと言う事になりました。

 

幸運だったことは、同じ時期に内弟子になる先生(現北京堂鍼灸横浜 院長馬場先生)がいたことでした。淺野先生が内弟子さんに指導されていることを聞くことできましたし、馬場先生と練習することもできました。また、当時の北京堂は、中野から生麦に引っ越してきて少し経った時期で、予約に余裕がある時もありましたので、淺野先生からたくさんの話を聞くことが出来たのは本当に有意義な時間でした。

 

治療現場では、長年苦しんでいた痛みが、改善されていくのを目の当たりにしました。皆さん大変喜ばれていました。なにせ、今まで何をやっても痛みがとれなかったのですから。そして驚いたのは、鍼を打たれた時の患者さんの声です。人によっては「イタイ~~」と叫ぶほどです。「治療でこんなに痛みをだして大丈夫か!?」と思っていましたが、数回治療を続けるとその絶叫も消えて、それと同時に患者さんの症状も軽くなっていきました。淺野先生は患者さんがつらそうにしていても、淡々と鍼を打ち続けていました。

 

5.北京堂式の痛みをついに体験

 

研修の時に大腰筋刺鍼の練習をしていても、健康な私はあまり痛みがありませんでした。私は腰痛がありませんでしたし、過去にぎっくり腰になったこともないので腰の状態が良かったからだと思います。ですから、患者さんのあの叫びは大げさなのでは?と思ったりもしておりました。あの日が来るまでは・・・

 

慣れない肉低労働を1日中した翌日の朝でした。着替えようとしたら、肩にズキッとした痛みが走りました。それから肩を上げるのがつらくなりました。1、2日休ませれば治るだろうと思ったのですが、あまり変化しません。それで鍼の練習をするときに肩の治療をしてもらいました。

 

鍼を入れている時にいつもとは違う痛みがありました。「やはり痛めているとひびくな・・・」と思っていました。それから、ひびきがどんどん強くなっていきました。腕がもぎれるのではないかと思うくらいの強い痛み。「もしかして、変なところに鍼をさしたのでは・・・」と疑ってしまうくらいでした。馬場先生は、研修の為別の部屋に行っており、呼ぶこともできません。鍼を置いている40分間は、かなりの苦痛でした。鍼を抜いた後もその日一日はずっとズキズキしていました。

 

そして次の朝です。恐る恐る肩を動かしてみると、何と何と痛みが2割くらいになっていました。二日後にはほとんど痛みはありませんでした。患者さんが叫んでしまう気持ちがよくわかりましたし、北京堂式の効果を体験することができ、ますます研修に熱が入りました。今でもこの体験を患者さんに話すことがあります。

 

6.インナーマッスル鍼法の特徴

 

この治療方法は、決して何十年も修行しなければ得ることのできない奥儀ではありません。私はこの治療方法をインナーマッスル鍼法と称して、シーベルズ大磯の治療方法の一つとして取り入れております。

 

インナーマッスル鍼法の特徴は、

①「鍼の太さ」が「太い」

②「鍼の長さ」が「長い」

③「鍼の本数」が「多い」

④「鍼を体に入れている時間」が「長い」

です。

 

ほとんどの痛みは、筋肉が過緊張(けいれん)を起こしているのが原因と申しました。筋肉の緊張をとる一つの方法は鍼治療ですが、ただ鍼を入れればそれで良いという訳ではありません。硬くなった筋肉に直接、太い鍼をたくさん入れて、そのまま20分~40分放置しておく事が大事なのです。平均で30~40本もの鍼を入れます。多い人は50~60本になることもあります。

 

 

筋肉が硬くなっている人ほど、鍼を入れたときにズーンとした重だるい痛みを感じます。この痛みは、注射のようなチクッとした痛みではなく、筋肉の奥のほうを指圧されたような感覚です。これを鍼のひびきとか得気(とっき)と呼びます。筋肉の緊張が強いほど、この得気は強く起きますので、患者さんによっては思わず「痛い!」と叫ぶ方もおります。

 

ですから、インナーマッスル鍼法に関しては、あえて「痛い」と最初に説明しています。ひびきが起こると治療を受けた方は、つらかった場所が直接刺激され、効きそうな気がすると言う方もおります。まさにその通りでこのひびきがつらい部分に起これば、効果は抜群で、筋肉が緩んできます。

 

ですので、私はひびきを重要視しているのです。筋肉が硬くなって悪いところがあるから、ひびきが起こる訳で、よい筋肉に鍼を入れても何も感じません。ひびきがあれば、悪いところにうまく当たっているという目安になるのです。治療を継続すると、ひびきが弱くなってきますが、それは痛みに慣れたのではなく、筋肉が柔らかくなってきたという証拠なのです。

 

痛みがなかなか取れない人は大抵、骨の近くの奥深い筋肉(インナーマッスル)が過緊張を起こしている事が多いと説明してきましたが、そこを治療するためには長い鍼を使用し、インナーマッスルをダイレクトに刺激します。長い鍼を使うと怖いと思うかもしれませんが、そこは解剖書といつもにらめっこし、危険部位や深さ、内臓の場所を把握し、安全は鍼の刺し方をマスターしている術者が治療しますのでご安心ください。

 

痛みがなかなか取れない人は、筋肉の固さも尋常ではありません。細い鍼では、筋肉に鍼を入れる事ができないこともあります。このような固い筋肉を緩めるためには、それ相応の刺激が必要で、鍼が太いほど刺激が強くなります。

 

一般的な鍼灸院で用いられる鍼は、直径0.14mm。当院は、初診・軽症であれば直径0.2mmで、直径0.25mmや0.3mmを使う事がおおいです。使い捨ての鍼は、0.3mmまでしかありません。症状が強い方は0.34mmの特注鍼を購入して頂くこともあります。ちなみに日本人の髪の毛の太さは平均0.1mmです。鍼が太いと言って、コンマ何ミリの世界ですから、実物を見ると「思ったより細いですね」と言う方がほとんどです。

 

鍼はいくつかの疾患は保険が使えるのですが、医師の同意書が必要であり、その手続きがとても面倒であり、また保険点数が短いために治療時間が制限されてしまいます。ですからインナーマッスル鍼法を保険で扱うことはできません。自由診療だからこそできる治療です。

 

当院の場合は、鍼を抜いた後に活法整体、マッサージなどを加えることもあります。ですから、インナーマッスル鍼法はとても手間ひまのかかる治療方法です。

 

7.適応症かどうかの判断

 

痛みに関してインナーマッスル鍼法鍼の適応症というのは、基本的に3回の治療で痛みに変化が出て、10回の治療で8割以上の痛みが改善すると予測できる症状です。しかし、生活習慣や年齢、重症度、改善具合の満足度によって治療回数の増減は当然出てきます。鍼で治る痛みは、血液循環障害による痛みで、つまり筋肉の痛みです。筋肉の痛みかどうか知るためには、自覚症状に頼らなければなりません。

 

①お風呂に入ると、痛みが和らぐ。

 温めると、その部分の温度が異常に高くなるので、その熱を逃がすため血管を広げ、血液を介してほかの所へ移動しようとするため、血液循環が良くなります。だから温めて痛みが和らげば、まず血液循環障害なので鍼治療の対象です。症状が強いと、お風呂程度の温めでは筋肉が緩まず、痛みが和らぎません。

 

②酒を飲んだ翌日に、痛みが悪化する。

 酒を飲むと血液循環が良くなると思うかもしれません。確かに酒を飲むと、人間の毛細血管が広がって赤くなり、体温も上がります。しかし、そのあとで寒気を感じます。これはアルコールが発熱し、熱を逃がすために体表の血管が広がって赤くなり、体温が上がりすぎないように一定に保とうとするからです。しかし、脳は酔っぱらっていますので、誤動作を起こして体温を放出しすぎ、予定の体温より下げてしまいます。そうすると、脳としては体温放出を止め、慌てて血管を閉めにかかるのです。そのときに鍼で広げた血管まで閉められてしまうのです。このときに体温が下がりすぎるから、寒気を感じるわけです。

 

③寝ていると、夜中や明け方に痛みが出る。

寝ていれば、使っているわけでなく、むしろ休めているのに痛みが出ます。日中は活動しますので、心臓は常に動いて、手足に血液を送り込み、十分な酸素を供給しなければなりません。しかし心臓も休息しなければ疲れてしまいます。

 

そこで手足を動かす必要のない夜間には、心臓の鼓動が穏やかになり、血圧も低くなります。すると過緊張した筋肉は血管が押さえつけられているので十分な血液が供給されず、酸素不足となって筋肉がさらに硬直し、神経を締め付けて痛み始めるのです。

 

④運動したあとは痛みが悪化する。

 これは筋肉が収縮していると、その筋肉内の血管が圧迫されて血流量が少なくなり、その少ない血液から運動に必要な酸素を取り込むので、結果として運動すればするほど血液や酸素不足となり、筋肉収縮が強くなって神経を圧迫するため、痛みが悪化するのです。だから縮んでしまった筋肉は、それに見合う血液量の運動しかできないのです。

 

⑤台風が近づいた時や低気圧になると痛みが増す。

 台風が近づいた時や気圧が低くなると、腰痛や頭痛の起きる人があります。これも血液循環障害です。まず台風が近づいた時や低気圧になると、気圧が下がります。周りの気圧が低くなると、血圧に押されて血管が広がります。血管が広がれば、血が流れやすくなって、血圧は下がります。「血管が広がって、血が流れやすくなるのでいいのではないか」と思うかもしれません。

 

しかし、太い血管の中を血液は流れますが、中には筋肉で圧迫された血管もあります。ところが血液は、そんな圧迫されて狭くなった血管など通らず、気圧という周囲圧力が減って通りやすくなった血管のほうを流れるわけです。すると今まで、少ないながらもある程度の血液が供給されていた固まった筋肉は、血液が流れないので酸素不足となり、ますます収縮します。すると神経が圧迫されて痛みが悪化するのです。

 

こうした症状に心当たりがあれば、鍼を硬くなった筋肉へ入れて緩めることにより、圧迫された神経と血管を開放し、治癒できる疾患の可能性があるということです。ぜひ参考にしてください。

 

8.治療回数の目安

 

一番ひどい痛みを10とすると、0~2まで回復する治療回数の目安です。しかし、生活習慣や年齢、重症度、改善具合の満足度によって治療回数の増減は当然出てきます。

  • ぎっくり腰:1~3回
  • 慢性腰痛:2~12回
  • 坐骨神経痛:1~12回
  • ねんざ・肉離れ(軽傷):1~3回
  • 寝違え:1~3回
  • 腱鞘炎:1~8回
  • 肩こり:2~8回
  • 慢性頭痛:2~6回
  • 五十肩は3~12回
  • 変形性膝関節症(変形軽度):2~8回

 

 

9.治療を受ける前に読んで下さい

 

治療前の注意事項

  • 食事・入浴・運動は治療の2時間前程度までに終えておいて下さい。特に治療する直前の食事や運動は避けてください。寝不足、疲労ひどい、体力がかなり落ちていたりすると、鍼治療後に気分が悪くなったり、吐き気がしたりすることがありますが、鍼を抜いた後、しばらく横になっていれば治ります。鍼をして血圧が下がったために脳貧血状態になったためです。寝不足や体調が悪いときは事前に教えてください。

 

  • 高血圧患者など、治療日3日前程度から血圧に著しい変動があったり、いつもと異なる頭痛や吐き気などがあった場合、治療をお断りすることがあります。

 

  • 鍼を入れている時間が20~40分と長いので、治療前はトイレにはいきましょう。

 

  • 鍼を入れている時は動かないようにして下さい。鍼が曲がったりします。体勢がつらい場合は、スタッフに声をかけて下さい。

 

  • 内出血を起こすことがあります。特に肩(上腕)や太ももの内側、お尻が出血しやすいです。3週間もあれば、自然と消失します。

 

治療後の注意事項

 

  • 治療当日にお酒を飲むと鍼治療の効き目が悪くなりますので、控えてください(痛みが強いときは3日くらい)。次の日から飲んでも構いませんが、飲みすぎは悪い部分が悪化しますので、早く治したければ、ほどほどの量に抑えた方が良いと思います。

 

  • 鍼治療をした後は、できるだけ横になって2~3時間休むと効果が高まります。休む時間を考慮に入れて、治療の予約時間を決めると良いでしょう。遠方から車で来る方は、どなたかに運転をしてもらうとよいでしょう。

 

  • 鍼をした日にマッサージ、ストレッチ、運動をしてはいけません。翌日は大丈夫ですが、痛みがひどい場合は、3日は休んで様子をみることをおすすめします。

 

  • 次回の治療は、基本的に3日以上空けて、1週間以内に来院してください。治療して1~3日は、鍼のあとの筋肉痛のような痛みやだるさが残ります。鍼は、硬く縮んだ筋肉のけいれんを解除して、筋肉痛に変えているのです。筋肉痛が治まったところで、次の治療をすると効果的です。完治していないのに、次の治療まで日数を空けると、元の悪い状態に戻ることもあります。だるさが続くと困ると言う場合はかならず申し出下さい(翌日が試合だ、旅行がある場合など)。

 

  • 重症の場合は、鍼治療後に、かえって痛みや痺れが増したりすることもあります。これは、鍼ごわりとか鍼あたり(マッサージでの揉み返しのようなもの)と呼ばれるもので、重症で麻痺していた部分に血が通いだし、痛みを感じるようになって起こります。この場合は、3日以上続き、1週間くらい残ることもあります。この状態がひどければ、もう一度鍼をして神経を締め付けなくなるまで筋肉をゆるめれば痛みが治まります。これを迎え鍼と呼びます。鍼治療で治らないことはあっても、悪くなることはありませんので、鍼ごわりが起きても、治療を中止せず、続けることが大切です。

 

  • 治療後1、2時間後であれば、お風呂は入っても構いません。治療後は滞っていた血流が改善し、自然治癒能力が活発化するので、血圧が安定した後に風呂に入ることで鍼灸治療の効果を促進出来ます(治療日当日はのぼせやすいので長湯は避けて下さい)。

 

  • 治療後は適度に水分摂取をしてください。鍼灸治療は血流を改善し、新陳代謝を活発にするため、免疫機能が向上しやすくなります。また、治療後に適度な水分を摂ることで、老廃物や疲労物質などが腎臓へ流れ、尿として体外へ排出されやすくなります。季節に関わらず、なるべく水分は体温に近い温度のものを摂るのが理想です。クエン酸やアミノ酸入りの飲料は筋肉の回復を早めます。

 

  • 湿布を貼ったり、痛み止めを飲むことは出来るだけ避けてください。