はりきゅうマッサージ シーベルズ大磯 代表の渡邉航也です。
選手村での施術は、スポーツオイルマッサージが主であるとの通達が事前にありました。海外でマッサージと言えばオイルマッサージが基本です。ボランティアの鍼灸マッサージ師に求められるのは、コンディショニングを目的としたスポーツマッサージ。残念ながら活法整体など自分のスキルを発揮できる場はないようです。
鍼は、海外でもかなり使用されるようになりましたが、オンリピックという本番の舞台で、ボランティアの鍼灸師から施術を受けたいという選手は少ないのではないかと予想されました。
それでも、鍼専用のスタッフを常時1名シフトに入れて、鍼希望の選手がいたら、まずその先生が施術をするというシステムになってました。そんな訳で私が鍼をすることはないだろうと思っていました。
私が主に活動した大磯のセーリング村は人数が少ないので、午前の部が鍼灸マッサージ師1人、夕方から夜は2名体制でした。
夜の部で活動していたときに、「鍼を受けたいという人が来てます」と受付から連絡がありました。
鍼専用スタッフがいるのは、東京の選手村だけ。もう一人の先生は、普段の施術であまり鍼をしていないとのことだったので、私が担当することになりました。まさか鍼治療をすることになるとは。汗、汗、汗・・・
恰幅の良いリトアニアの女性が待っていました。年齢は40代半ば。選手ではなくコーチでした。軽い腰痛と首肩の張りがあるようです。鍼の経験について聞くと、住んでいる街に鍼灸院があって、時々、鍼治療を受けているようなことを言っています。リトアニアにも鍼を受けられるところがあるのですね。
オンライン英会話で勉強をしていた時期があるのですが、私は、セルビアなどの東欧系の方を先生に選んでいました。自己紹介で、「I am an acupuncturist(私は鍼師です)」というと、ほとんどの方が知っていて、鍼治療に興味を持ってくれました。ただ、受けたことがある人はいなかったように思います。
腰痛の鍼治療を先にしてから、要望された上半身のオイルマッサージを最後に行うということを提案。
施術開始。私は英語が得意ではないので、言葉が思うように出ません。また、いつもとは違う環境で、しかも鍼のシミュレーションをしていなかったので、たどたどしい感じです。
それでも、腰痛の原因と思われる場所を見つけて、鍼をしました。しっかとコリにあたったようで良い反応です。
そして、オイルマッサージに移行。普段、女性の肩背部をオイルで施術することはあまりありません。タオルワークや施術部位に気をつけながら、丁寧に、でもガッチリした体でしたので、しっかりとマッサージを行いました。
無事終了。さて、どうだったかな??と少し不安でしたが、すごい大げさに褒めてくれました。欧米人らしいリアクション。わたしもホッとして、思わず笑顔になりました。また施術を受けたいといって、私を指名して明日の予約をしていきました。
翌日に調子を聞いたら、まずまず良いとのことで基本的には同じような施術を希望されました。
腰痛は、深いところにコリがあるでしたので、今回はやや太く長めの鍼を使うことを提案。そして、「ここ!」という場所に、しっかりと鍼をしました。
またまた施術をお願いしたいとのこと。次のシフトが3日後でしたので、其の日に予約を入れていきました。
3回目も基本的には同じ施術です。この女性はどうやら鍼の刺激がお好きなようですね。3回目ともなると、私もクライアントの体を把握できてきていますし、リラッスクして施術ができました。
女性からの信頼も感じられおまかせモードになっているので、良い場の雰囲気が出来て、深い癒やしモードに入っていく感じがありました。
次もお願いしたいとのことでしたが、私の大磯でのボランティアはこの日が最終日。それを聞いてすごい残念がり、そして、「今までありがとう」的な言葉を掛けてくれました。
そして、ピンバッチをくれました。
今回の出来事をある患者さんにお話したら、「先生の治療を無料で受けられるなら、毎回行きますよ!羨ましいな~」とおっしゃってました(笑)
選手村での施術と言うよりは、外国で開業して、はじめてリピートしてくれたクライアントさん、というイメージではありますが、とてもよい経験でした。