指圧のこだわり

0.目次

1.はじめに

2.指圧とは

3.横向きのこどわり

4.癒しビジネス

5.予防医学と指圧

1.はじめに

 私は「指圧師」です。

 指圧は、日本で生まれた手技療法の一種で、100年以上の歴史をもち、医療(正確には医療類似行為)として厚生労働省で認められています。指圧を行うには、医師や看護師と同じように一定の期間定められた学校で学び、国家試験を受け合格しなければなりません。国家資格の正式名称は、「あんまマッサージ指圧師」です。「あんま」「マッサージ」「指圧」は、それぞれ発祥が異なり、方法(技)も違います。しかし、似ている部分もあるため、3つが合わさって1つの資格となっています。

 一般的に、手で押したり揉んだりさすったりする行為は、「マッサージ」と呼ばれています。ですので、私は、指圧を行っている時でも、皆様とお話しするときには、分かりやすさを優先して、「マッサージ」という言葉をつかっています。しかし、「指圧する」ことには強いこだわりをもっています。

シーベルズ大磯でのメニューは「指圧整体マッサージ」にしています。私の手技療法のベースである「指圧」と、整体(碓井流活法)を組み合わせて施術していることと、皆様がイメージしやすい「マッサージ」という言葉を組みあわせました。「指圧」が名前の一番最初にあるのは偶然なのですが、少し考えてみると、「指圧」のこだわり無意識に出てしまったのかもしれません。

 最初に勤めた治療院の先代の院長は、私は直接お会いしたことはありませんが、指圧を創設した浪越徳治郎先生の孫弟子で、浪越先生にも指圧をされたことがあり、お褒めの言葉をいただいたことがあるそうです。治療院には、浪越先生の色紙が飾られていました。私の年代で、浪越徳治郎先生といえば、「天才・たけしの元気が出るテレビ!」での「ジェット浪越」がすぐにイメージが湧きますが、まさか自分が浪越徳治郎先生のDNAを継ぐことになるとは夢にも思いませんでした。ちなみに、共演していたエンペラー吉田というお爺さんがよく言っていた「えらくなくとも正しく生きる」という言葉は、なぜか少年だった私の心に響き、今でも座右の銘の一つになっております。

その治療院を辞めた後、「キッツ鍼灸治療院 金沢文庫店」の院長として4年間施術をしてきて、「先生のマッサージは他とは違う」「痛いけどすごくすっきりする」「効果が長持ちする」などのお言葉を頂くことができました。まだまだ修行の身で恥ずかしい限りですが、大変嬉しく思っております。それは、やはり伝統ある治療院で指圧を勉強してきて、「圧(あつ)」のこだわりが人一倍あったからなのかなと思っています。

2.指圧とは

 では、指圧とはなんぞやと言いますと、指圧は読んで字のごとく、指の圧(手の平や肘なども使う)をツボや痛む場所や血流循環の悪い場所に及ぼすことです。術者の経験や勘、西洋医学的な筋肉・骨・神経の分布などの理論に基づき、患者の状態に応じて、「圧」を繰り返し患部に施します。

  どうも「指圧」というと古いイメージがあることと、温泉場の癒しで一時的な効果しかない、というイメージが強いですが、実際はそれだけにはとどまりません。適切に施術することで、全身の関節の運動を正常に戻し、呼吸をゆっくりとした腹式呼吸にさせ、自律神経などの神経全般のバランスを整えます。また、習慣的な身体の運動と偏った反復運動による身体のゆがみを正常化かせ、人間本来備わっている自然治癒力を最大限に高めることができます。

 指圧は【力】ではなく、【技】です。指圧している姿を見ると簡単に圧しているように見えるので、誰にでも出来ると思われるのですが、実際に他人に30分ほどやってみればわかると思いますが、大変難しいものです(そして指圧を行う人はヘトヘトに疲れます)。

 圧す場所、圧す方向、指の当て方、力の入れ加減などがあり、これがうまく決まらないと、指圧独特のジワーとした気持ち良さは得られませんし、コリがなかなかほぐれてきません。指圧は強く押せばよいという訳ではありませんが、コリが深部にあればそれなりの刺激が必要です。しかし、基本を無視して、力技でコリをほぐそうとすると、患者には不快感を与え、いわゆる揉み返しを誘発させてしまいます。

 また、自分自身も指や手首を痛めたり、腰痛を起こしたりしてしまいます。他にも技術的なことで言うと、圧した指を体からどう離すかとか、親指以外の指の意識をどうするか、圧を効果的に与えるための姿勢をどうするか、などなどポイントはたくさんあります。

 最近、40の手習いで武道を始めたのですが、今まで以上に姿勢の大切さを痛感しております。姿勢が変わるだけで力の伝わり方がこんなにも違うのかと実感しております。施術にも大いに生かせそうです。それまでも、姿勢に関しては、自分なりに工夫しておりましたが、意識の仕方を今少し変えています。

 また、現在勉強中のファシャワーク(筋膜リリース)という手技療法では、今までとは違った「圧す」という感覚を得ています。指圧の3原則は「垂直圧・持続圧・漸増漸減」と言われています。要は、皮膚に対して垂直に(垂直圧)、ゆっくりと圧します(漸増)。コリに届いたら、そこでしばらく留まり(持続圧)、そしてゆっくりと指を離します(漸減)。

 しかし、ファシャワーク(筋膜リリース)での一部の方法では、持続圧をくわえたまま、角度を変えたり、方向を変えたり、ずらすように引っ張ったり、また患者(クライアント)さんに動いてもらったりします。これはこれで、大変気持ち良く、またほぐれる感じがあります。ファシャワーク(筋膜リリース)では、これを「リリース」されたと表現します。こういった技術も少しずつ取り入れています。

今後ますます自分の「圧」が進化していく予感がしております。

3.横向きのこだわり

 マッサージを受けるときの姿勢は、うつ伏せと仰向けで行うことが多いと思いますが、シーベルズ大磯では、横向きの姿勢をとっていただくことが多いです。うつ伏せと仰向けの方が、施術しやすいと思われがちですが、実際には横向きだと重要ポイント・ツボ(特に上半身(首、肩、腕、背中、胸))の施術を網羅できる上に、患者(クライアント)さんの姿勢にも無理がないため、施術の治癒率が倍増します。

 患者(クライアント)さんにとっては、横向きの姿勢は非常に楽でリラックスできるのです。ずーっとうつぶせのままマッサージされるのって、かなりきつくありませんか?また、妊婦さんや年配者にとっても横向きは理想的な姿勢といえます。特に年配者では骨が弱っている方が多いので、うつぶせで上から圧されると、骨折のリスクを考え強い圧を加えられません。しかし、横向きだと圧を逃がすことができるので、ツボやコリに安全で効果的に適度な刺激を加えることができるのです。

 その代わり、施術者の技術が求められます。横向きのマッサージは難しいです。学校でも一応習いますが、そんなに時間はとりません。患者(クライアント)さんにとっては、 横向きは大変リラックスできます。初めて施術を受ける時に、うつ伏せでいきなりガツガツとマッサージされるとなんか緊張しませんか?私は、横向きにすることで、お話しやすくなるので、初めの5~10分は色々とお話をすることで、患者(クライアント)さんと信頼関係を深めながら、状態を把握するようにしております。

 先ほど、横向きだと、特に上半身の施術で隅々までコリをほぐせると書きましたが、「肩こり」でお悩みの方でマッサージにいってもなかなか効果が感じられない、または効果が持続しないという方は、シーベルズ大磯の横向き指圧整体マッサージをぜひ受けてみて下さい。何か違いを感じていただけるのではないかと思っております。

4.癒しビジネス

 街のいたるところに「整体」「ほぐし」「ボディバランス」「骨盤調整」などの看板が目立ちます。マッサージのような行為をしていても、治療目的と言わなければ、ひとつの商売として厚生労働省も、見て見ぬふりをしています。「あんま」「マッサージ」「指圧」という言葉を使わなければ、誰でも、何の許可もなく、マッサージ的なお店を開くことができます。こういう場合は、何かしらの民間資格を取得しているケースが多いです。

 逆に、国家資格を持っていると様々な制約が課せられませす。例えば、広告の制限です。私たちは、保健所の管轄になるわけですが、厳しい広告の規制があります。簡単に言うと、治療院名、場所(地図)、電話番号、診療時間くらいしか広告に書くことができません。メニュー、金額、治療方法、期待される効果などを書いてはいけないのです。民間資格の方たちは、そういった規制はないので、結構派手に広告がうてるのです。今の段階では、インターネットには、広告制限がないことになっているので、そちらでアピールするしかありません。私も少しでも多くの人にはりきゅうマッサージの良さを知ってもらいたいと思い、自力でこのようなホームページを作成しています。

 そういった現実があり、大手会社がビジネスチャンスと「手の商売」に進出しています。素人に短期間の講習と接客マニュアルを持たせ、洒落た空間を提供すればそれでビジネスが成立です。これは世界的な傾向のようです。世界中の人が、半健康症候群(病名はつかないが、なんだか調子が悪い。代表的なのがひどい肩こり!)に陥っている現実があります。慢性疲労からくる倦怠感を訴える人が増え、肉体的にも精神的にも不健康な人があふれかえっているのです。その本能的な警告が、癒しビジネスをコンビニと同じ気軽さで取り入れられる風潮を生んだのでしょう。一時しのぎとはいえ値段も手ごろ、肌に直接伝わる安らぎと予防医学的な側面を求める人で繁盛するわけです。

 国家資格を持つ先生たちは、このような人たちを「無資格者」と呼び、警告を与えています。しかし、癒しビジネスは今後もっと拡大していくでしょう。実は私はこういった流れは決して悪いことではないと思います。一時的でも心身が楽になるならこれは大変よいことだと思うからです。ただし、癒すことに対して真摯に取り組んでいるお店・スタッフであることが、大前提なのです。そうでない人たちも多いということですが・・・

 しかし、問題なのは、過大に広告して、あたかも医療行為に見せかけて商売をしている人たちが多いということです。私はいわゆる無資格者でも素晴らしい施術をされている方を知っていて、教えを請うたこともありますが、そんなすごい人は一握りの方だけです。

 「整体」「カイロ」「骨盤調整」などは、いかにも治療のような印象を与えており、実際にそのように認識されているます。実際に、治療目的では整体に行き、慰安目的だと指圧やマッサージに行くという人が多いのです。私はこういった現実を知り、がっかりすると同時に、「あんまマッサージ指圧師」が国家資格ということに甘えていたのではないかと思います。

 しかし、実態を知った上で、ぜひ施術を受けていただいきたいものです。私は国家資格を持っている人がすごいと思っている訳ではありません。先ほど申したとおり、国家資格がなくてもすごい技術をもち、知識も豊富で患者さんから大きな信頼を得ている施術者はいます。そんな方から比べると、指圧師はもっともっと勉強するべきだとも思っています。

  指圧師は、3年間の教育を受け国家試験に通った治療のプロです。リラクゼーションだけの目的なら、その手の施設にお任せしていいと思いますが、私はリラクゼーション目的でこられる方にも、常に少しでも良くなって帰ってもらいたい、ということを念頭においています。治療はリラクゼーションの延長にあると考えるからです。

 だから、ちょっと肩が凝っているから軽く揉んでほしいという方にでも、「気持ちよかった!」はもちろんのこと、期待以上の効果が出るように施術しています。そこから本格的な治療に入っていく方も多々おります。私は、国家資格を有した治療師(指圧師)になったからには、指圧の分野においては指圧道を謙虚にあゆみ、その奥深さを認識して、頭を下げつつ、かつ心の奥のプライドを大切にして技を研鑽していきたいと思っています。

5.予防医学と指圧

 予防医学は21世紀の課題といえるでしょう。人間は常に100%の健康が本当に必要なのでしょうか?私たちは健康、健康とビクビクしすぎるように思います。健康の定義は各人がお持ちだと思いますが、私は睡眠を十分にとり、心地よく起きられ、疲労が次の日に残らず、毎日が気持ちよく送れればよいと思っています。バイオリズムに合わせて毎日を送り、からだのセンサーを鈍らせないように気をつけています。

 身体の調子はいつも一定ではありません。体力が低下したり変調をきたして、健康度が50%になり、痛みや症状が出てきた場合には、すみやかに体を休めたり、指圧などで回復させるのが大事です。人間は本来なら、人生を全うして死ぬようにできているのです。寿命がくるまで健やかに、という願いをかなえるための手助けをするのが指圧の役目です。患者さんの幸福な人生をフォローするために指圧はあると思っています。

 定期的に指圧で身体のメンテナンスをしてみませんか?体が楽になる喜びを感じてください。

2015年12月15日 | カテゴリー :